人口2300人の離島、島根県海士町から描く僕らの未来。

公開日: : Event, NPO

島根県隠岐諸島、海士町とは?

突然ですが、海士町(あまちょう)という島をご存知でしょうか。島根県から北60キロ、日本海に浮かぶ隠岐諸島の中の一つの島です。

先日慶應義塾大学牛島ゼミの主催で、人口2300人という超過疎の島に移住し、仲間とともに株式会社を設立された、信岡良亮さんにお話を伺いました。(※Facebookイベントページ

イベントは前半部が講義&質疑、後半がワークショップ形式で進みましたが、今回は前半部を中心に、気になったポイントをピックアップします。

様々なメディアも注目する、海士町とは?

イベントの紹介に入る前に、もう少し海士町についての事前情報をご紹介します。実は近年様々なメディアが取り上げたり、有名人が訪れたりと、何かと話題になっていたので、ぼく自身も気になっていました。一部ご紹介すると、、、

ハフポスト、ガイヤの夜明け

ハフポストや、ガイアの夜明けでも取り上げられています。

[ハフィントン・ポスト]「ないものはない」離島・島根県海士町に人が集まる秘密とは? 「役場は住民総合サービス会社」という山内道雄町長の改革
[テレビ東京 ガイアの夜明け]生活を変える“冷凍技術”

ミクシィ朝倉さん、家入一真さん、、、

モンストが大ヒットで絶好調のミクシィ前社長・朝倉さんも訪れてたようです。
[日経ビジネス]渦中のミクシィ社長を離島で直撃
電撃退任と今後について聞いてみた

都知事選に出馬した家入一真氏も訪れてましたね。
[島根県 タウンネット]家入一真さん、熱い離島・海士町を行く

Ama

ITベンチャーから、Iターンの集う海士町へ

信岡良亮さんの自己紹介

信岡さんの自己紹介から。初めて海士町に訪れたのは、2007年9月、11月には移住を決め、翌年1月には現地で会社を設立した、と言うから驚きです。

1982年生まれ。大阪府出身。同志社大学卒業。ベンチャー企業に勤めた 後、2007年11月に海士町へ移住。株式会社 巡の環を仲間とともに設立。

隠岐諸島の海士町にある「まちづくり会社」。海士町の魅力化を行い、島に根付く「地域づくり事業」をはじめ、イオングループなどが参加する企業研修・五感塾などの島から学ぶ「教育事業」、特産品販売やweb制作などの島 を伝える「メディア事業」の3つを基幹事業とし、リアルとWebを問わず、様々なイベントを企画運営する。著書「僕たちは島で、未来をみることにした』(木楽社)

離島経済新聞より引用

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どういうキッカケで海士町に?

今回のイベントの肝になるような質問ですね。こんな質問から始まりました。(以下、敬称略)

ITベンチャーに就職

信岡)大学を卒業し、ウェブサイトを作るベンチャーに就職しました。最初はとても楽しかったです。ラブ成長!みたいな。上場を目指して、日々ビジネスモデルを変えていくような、目まぐるしくも楽しい日々でした。

一体何のために働いているんだろう

信岡)しかし体調を崩したことをキッカケに、働き方を考え始めました。「一体何のために働いてるんだろう。」経済成長の先に、幸せになる未来があるんだろうか、と考え始めたんです。20年後も同じ働き方ができるのだろうか、とか。そんなことを考えていては、成長真っ最中の会社に迷惑がかかるので、まず会社をやめることにしました。

Tokyo

雇用がないから地方に戻れない、という現実

信岡)当時は環境問題とか、「持続可能な社会」といった言葉が流行っており、いろんな所でイベントが行われていたので、友人の誘いでそういった類の勉強会に参加しました。ただ週二日そういった勉強会開いても、残念ながら月から金まで大量消費社会で働いてる。しかし地方に戻って大量消費社会から抜けだそうと思っても、地方に雇用がないから戻ることができない、という現実に気がつきました。

町長の本に出会ったことがキッカケに

信岡)じゃあ田舎で雇用を作って、大量生産じゃない仕組みを勉強し、考える場所を作ろう!そう考えていた時に、海士町長の本「離島発 生き残るための10の戦略 (生活人新書)」に出会い興味を持ち、3泊4日で海士町に遊びにいきました。6月に会社を辞め、9月に海士町一回目、11月に移住。翌年1月に会社設立といった感じです。

色んな選択肢の中でなぜ海士町?

様々な地方や、過疎地域がある中で、なぜ海士町を選んだの?

よそ者馬鹿者若者、大歓迎!!

信岡)いろんな選択肢はあったけど、どれも5年以上続けられる気がしなかったんです。あとは町長の本に、「島はこのまま行くとピンチです。よそ者馬鹿者若者大歓迎です!」って書いてあって、「おれ、よそ者馬鹿者若者、全部当てはまるじゃん!」って思って(笑)。

信岡)実際海士町によそ者若者は多くて、当時120人くらいIターン生(出身地とは別の地方に移り住む、特に都市部から田舎に移り住むこと)がいました。現在は人口2300人中、300人がIターン、つまりは人口の1割がIターンの方なんです。そういうこともあって、田舎の希望!とか、総務大臣の地域活性化大賞を受賞したりしてます。

Iターンの人がどれだけ海士町に残る?

信岡)数字上は2004年から6割くらいが残っている。普通の田舎だと、3年で1−2割と言われているので驚異的な数字。まぁ遠くはなれているため、そもそも感度が高い人が集まっているというのもありますが。

信岡)ただ雇用が補えているか、というと難しいところもある。リーマン・ショックの後、国が補助金を出して、田舎の雇用を運営してる。馴染んでも仕事がないので問題はあります。

Uターンの人はいる?

信岡)最近話題になってきたので、Uターンの人も増えてきています。昔は中学生にアンケート取ると、2割しか帰ってきたいと答えなかったのに、今は6割が帰ってきたい、と答えています。

Nobuoka

海士町と、「巡の環」の取り組み

海士町の改革って?

さきほどの町長の本に、海士町の改革がいくつか書いてあると仰っていたけど、具体的にはどんなこと?

信岡)もともと役場職員じゃない人が、改革選挙に勝って町長になった。その町長が最初に自身の給料を50%オフにした。これまで職場職員じゃなかった方が、急に町長になった途端、自身の給料カットする姿を見て、周りのもともと役場にいた職員も給料カットを申し出たそう。

信岡)それで浮いたお金で、Iターン用の住居を作ったり、CASシステムという冷凍加工する装置を導入したそうです。

海士町では、白いか等の新鮮な魚介類が採れますが、離島であるが故に、市場に着くまでに時間と費用がかかり、商品価値を落としてしまうというハンディがありました。

この離島のハンディを克服する為、※CAS(Cells Alive System)と呼ばれる、
凍結技術を導入した農林水産物加工施設の整備を行いました。これにより、付加価値を付けて、旬の味と鮮度を保ったまま東京などの大消費地への出荷を可能とし、加えて食の安心安全を提供することで離島のハンディを克服し、第1産業の再生と後継者育成に繋げること目標としています。

[海士町サイト]CASシステム活用の取組み
から引用

地域活性化させるための資源の見つけ方

地域活性化するための資源ってどうやって見つけるんですか?

信岡)やはり一次産業もしくは観光業が中心になると思います。基本的には「特産品開発」「企業誘致」「観光品」になってくるかと。

信岡)海士町も特産品開発を行っています。その1つが「さざえカレー」。Webデパートという通販サイトを作って、県外にも販売しています。

海士Webデパート|隠岐諸島の海士(あま)町から新鮮な食材や様々な商品をお届け海士Webデパート|隠岐諸島の海士(あま)町から新鮮な食材や様々な商品をお届け

島前高校魅力化プロジェクト

信岡)あとは教育に力を入れています。人口が減り、高校がなくなる危機。高校がなくなると、子供は島外に行かざる負えない。ただ仕送りにもお金が大量に掛ってしまう。

信岡)そこで「魅力化プロジェクト」という、高校を魅力化し、島前内をはじめ全国からも生徒が集まる、魅力と活力ある高校づくりを目指したプロジェクトが立てられた。結果として、潰れるはずだった高校が、2クラスに増えるという快挙を達成したそうです。

Shimane

※島前魅力化プロジェクトの背景や取り組みは、こちらのサイトが詳しいので是非。非常に面白い事例です。

島前高校魅力化プロジェクト島前高校魅力化プロジェクト

巡の環は何をしようとしている?

これまで海士町全体の取り組みついてでしたが、実際に巡の環、そして信岡さんは何をしようとしているんですか?

信岡)学校を作りたいです。都市での生活が「何かずれている」と感じた都会の人が、すぐ田舎に移住するというのは、現在ハードルが高い。そのプロセスを学ぶための、学校を作りたい。社会人大学みたいな。現在は教える内容のコンテンツを作っています。

信岡)どうやったら島の魅力だったり、誇りを高めていけるか。通信販売の仕組みを作って、漁業の方と一緒に儲けていく。地域と触れることで、ビジネス以外の力「人間力」を高めることができる。

島と馴染む方法は?

どうやって地域社会に入っていったのか、という点で、島と馴染む方法は?

信岡)馴染むには一言で言えない深さ、難しさがある。外国で一人で行く感覚。最初言葉が合わない。都会で働いてるときの言葉と田舎での言葉って、同じ日本語でも違う。たとえば田舎は口コミが主流なので、HPを作ると言っても、スッと理解されなかったり。

信岡)都会での「コミュニティ」って言葉は、バスケが好きなコミュニティなど「自分の好きな機能。この指とまれ。」って意味だけど、田舎だと「コミュニティ」は「生まれながらのもの」だったりする。

信岡)海士WebデパートというECを作るにあたって、現地産業を見に行くついでに、現地の方と一緒に作業することを重視していました。ただ自分たちが儲けるためでなく、現地の人と一緒に儲けることを意識していました。

田舎で起業する難しさ

信岡)「稼ぐ」というのが非常に難しい。なぜなら営業コストがとても高いから。島根圏の人口が70万、松江が20万人程度しかいない。20万人って渋谷区より小さい。20万人の商圏に海士町のもの持っていてっても売れない。東京に売りに行くなら尚更コストが掛かってしまう。

信岡)また資源を売ろうにしても、数に限度があるので、魅力を感じてくれるクライアントがいても、安定供給が難しかったりする。そういう点でビジネスを作るというハードルが非常に高い。

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以上、ここまでが学生からの質疑を中心に進んだ前半部でした。ここからはイベント後半で信岡さんから伺った話をもとに、すこし考えたことを。

一生懸命働いているのに、どうして未来は明るくならないのだろう?

イベントの後半は、「一生懸命働いているのに、どうして未来は明るくならないのだろう?」というテーマで話が進みました。

絶滅危惧種である日本人

ご存知のように、人口減少社会の我が国ニッポンです。ただ、どれだけやばい状態なのか、あまり実感として理解されてない気もします。

ハフポストの報道によると、2013年一年間に減った日本の人口は、過去最大の23万9000人だそう。これは1年間で青森県八戸市などに匹敵する人口が減った計算だそうです。

[ハフポスト]日本人の人口減少が過去最大 2013年だけで23万9000人も減る

さらに言えば、親子孫の三世代で個体数が半減している状態とも言われており、正に「絶滅危惧種」の日本人なわけです。

長い労働時間、と低い幸福度

また良く言われる話ですが、日本人は他の先進国に比べ、労働時間が長い。

2011年の日本人1人あたりの総実労働時間は平均1728時間、英国(1625時間)、フランス(1476時間)、ドイツ(1413時間)、などに比べると長時間労働が依然続いている。オランダ(1379時間)に比べると、実に349時間もの大差となる。

[ダイアモンド・オンライン]日本人の労働時間が長い原因は残業を「評価」する誤った精神論にある

またこちらもよく言われますが、日本人の幸福度は低い。2013年の国連調査によると、GDP三位の日本は、幸福度ランキングでは43位だそうです。(参照

勿論幸福度にどこまで信憑性があるのか!とか、労働時間と幸福度の相関性とか、ツッコむ点はありますが、「いっぱい働いてるのに、幸せに暮らしてる人が少ない」というのは、感覚値として正しい気がします。

だからこそ、今回信岡さんが仰った「一生懸命働いているのに、どうして未来は明るくならないのだろう?」という問いは、なかなか刺さるものがありました。

Ama2

経済成長 ≠ 幸せ

そこから考えられる仮説としては、「経済成長=幸せ」というモデルが、もはや機能していないということ。

もちろんある程度のお金は必要だけど、僕らは必要以上の時間を働き、多くの物を生み出し、消費をしている。そして環境は悪化し、資源は枯渇する。するとその影響で生活必需品の値段は高騰し、さらに多くのお金が必要になる。そうして僕らは更なる労働に勤しむ。

こんな悪循環のモデルが出来上がってるようにも感じます。らせん階段のように、どんどん悪くなるような。(ウクライナのムヒカ大統領のスピーチを思い出しました。)

島という小さな経済

これを打開する一つの可能性が、”島”という経済圏にあるかもしれない。そんな話を信岡さんも仰っていました。

適正な時間だけ働くことによって、必要な分だけ物を生み出し、需要と供給が安定する経済。環境悪化・資源枯渇に繋がらない程度の消費活動。それによって、生活必需品の値段高騰も起こらず、過度にお金が必要にならない。よって、過度な労働も生まれない。

絵に描いた餅のような話ではありますが、現在の資本主義の問題が、ここまで顕在化している以上、新たな解決策は模索しなきゃいけない状態にあると思います。

それを探す場所は、課題先進国ニッポン、その中でも少子高齢化の最先端を行く”島”なのかもしれません。

経済成長しない中で、どうやって幸福度を上げていくのか

サラリーマンの平均年収も下がり続け、年収1000万なんて、経済成長が望めない日本においては、幻想になりつつあるように感じます。少なくとも全員が高年収なんて難しいし、年収だけを幸せの指標に置くのは、今後厳しい気がします。

じゃあ経済成長しない中で、どうやって幸福度を上げるのか、そんな命題を僕らは突き付けられているように思います。高知に移住したイケハヤさんなんかは、そういう意味で一つのモデルケースになるかもしれませんね。

「経済成長に代わる、幸せの価値観を探さなきゃなぁー」とは、ぼんやり考えていたんですが、その可能性が島にある、ということを学べたイベントでした。今度実際に海士町にも遊びに行こうと考えています。一緒に行く人、募集中です。ではでは!

8/31 AMAカフェ@東京有明

余談ですが、2014/8/31に信岡さんと、一緒に巡の環を経営されている阿部さんとで、AMAカフェなるイベントを東京で行うそうです。興味ある方は、以下からどうぞ!

AMAカフェとは、島根県隠岐郡海士町(あまちょう)の食材を使った料理などを通して、海士の魅力を全国にお届けし、島からの旬の食べ物やそこに集まってくれた人たちとの出会いを楽しむ一日限定カフェです。

8/31(日) AMAカフェ vol25 @東京有明~阿部と信岡で話すそれぞれの未来図~|巡の環8/31(日) AMAカフェ vol25 @東京有明~阿部と信岡で話すそれぞれの未来図~|巡の環

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